にぎわう体育館内。舞台上に嶂がマイクを持って立っている。 |
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嶂 | さーて皆さんお待たせしました、お待ちかねの人気ランキングの発表やでー!まずは十位から四位の発表! |
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がさがさと大きな模造紙が舞台に貼り出される。 |
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雅 | ああっ!黒会長のクラスが五位に入ってるー!僕のクラスがその下の六位だなんて…。 |
連 | へへーん、罠がうまいからって上位に入れると思ったら大間違いだぜー。 |
優 | あ、黒の釣りは八位ですよ。 |
連 | なに!?クラスの方サボってまで気合入れてたのに八位だって!? |
有栖 | どっちも黒のところなんだから両方に気合入れてくださいよ会長。 |
瑳羅 | 全体を見切れていないなんて会長失格ですわね。 |
連 | うぐ…味方から叩かれるとなんか余計に痛いな…。 |
凛 | 白は今のところ雅のクラスだけか。 |
皓 | 上位に白が沢山入ってるといいんですが…。 |
嶂 | 白黒勝負は上位十位圏内に双方の生徒会役員が属するクラス、および各生徒会の催しでより多くランクインしている方の勝利やでー。ここまでは黒龍会が一歩リード! |
龍亮 | くそー…。嶂、次はまだか? |
嶂 | 毎度龍はせっかちやなあ。しゃあないなー、ほな次上位三位から一位の発表やで! |
もう一枚、がさがさと大きな模造紙が舞台に貼り出される。 |
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皓 | あ、やった!一位は僕のクラスです! |
龍亮 | 白のお化け屋敷はランク外かー…。 |
凛 | 龍のところが三位に入ってるな。 |
瑳羅 | 私のクラスがランク外ですって!?どういうことですの!? |
連・有栖 | (そりゃずっと喫茶店に篭って何もしてなかったからじゃ…) |
優 | あ、会長。白の連中ですよ。 |
龍亮 | なんだよ。いちゃもんつけに来たのか? |
連 | 目つきの悪さは白会長様には叶いませんよーだ。 |
龍亮 | 性格の悪さに定評のある黒会長様ほどではありませんよーだ。 |
皓 | 人望は見た目より性格の方が大事ですからね。 |
連 | む。そんなこといってるとばらすぞ?お前の赤い…。 |
瑳羅、にこやかな顔で連の靴を踏み頬を強く引っ張る。 |
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瑳羅 | ごめんあそばせ。 |
連 | いででででっ!! |
嶂 | さあ、皆さんもう分かったな!今年の文化祭オセロゲームは三対二で白虎会の勝利やー! |
連 | なにー!? |
龍亮 | よっしゃ!凛、皓、雅。勝ったぞ! |
雅 | やったやったー! |
凛 | やったな! |
皓 | これで黒の二冠は防げましたね! |
連 | ちくしょー、一票差とはいえ負けるとは…。 |
有栖 | 悔しいなあ、体育祭は圧勝したのに…。 |
優 | 二冠ならず…。 |
瑳羅 | 甘いですわね会長。来年こそは二冠をとってみせるんですわよ! |
優 | (自力でとろうとは思わないんですね…。) |
雅 | へへーん、そういうのを負け犬の遠吠えっていうんだよねー。 |
瑳羅 | なんですってえ!? |
皓 | さ、さーちゃん…。 |
瑳羅 | こーちゃんはお黙りなさい! |
各々、一瞬の沈黙。 |
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連・優 | コウちゃん? |
龍・凛 | さーちゃん? |
瑳羅・皓 | あ…。 |
凛 | 皓、お前さんいつから黒の書記をそんな親しい呼び方するようになったんだい? |
龍亮 | 昔はそんな呼び方してたのかあ。 |
皓 | あ、いや、そのですね…。 |
連 | ずーいぶん仲良さげだなあ瑳羅〜? |
瑳羅 | え…あ…お、おほほほほほ! |
優 | (今もなおその呼び方をしてるなんて…白の副会長、やはり許せません!) |
雅 | え?え?どういうことですか副会長! |
アドリブで会話、FO。 |
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連 | あー暇だなあー…。 |
有栖 | 白の人はほとんど受験だから全然会わないですしね。 |
連 | 黒は三年いないもんな。行事も終わっちまったし、あいつらいないと張り合いなくてつまんねーんだよなあ。嶂も今時期は学校誌の編集でほとんど遊びに来ないし。 |
優 | そういえば、去年はどんな様子だったんですか? |
連 | 去年は黒が勝ったから結構しばらくの間のさばってたな。あの時の龍亮の顔は見物だったぞー。 |
連、にやにやする。その様子をお茶を飲みながら流し目で一瞥する瑳羅。 |
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瑳羅 | でも会長は随分先輩方の足を引っ張っておりましたわね。去年の黒の謳歌は先輩方の賜物ですわ。 |
優 | い、いつの間にいたんですか!? |
瑳羅 | 失礼ですわね。先程からここでお茶をのんでますわよ。 |
有栖 | 優、気付くの遅すぎだよー。罰で三ヶ月ストレートで過ごしてるのに、まだすぐに気付かないの? |
優 | うう…だって瑳羅さんといえば綺麗な縦ロールじゃないですか…。でもストレート姿も素敵です。 |
連 | 優の鈍さもここまでくると天然記念物だな。それより、瑳羅お前そんないらないこと覚えてんじゃねーよ。 |
瑳羅 | 罰のお返しですわ。それにそれは事実じゃございませんの?オーッホホホホ! |
連 | そうやって何かにつけて人のあげあし取るの好きだよな、お前は…。優が何でこんな奴に惚れたんだかさっぱりわかんねーな。 |
優 | そ、それは…。話せば長くなりまして…。 |
有栖 | あ。赤くなってる。 |
瑳羅、一息ついて湯飲みを置く。 |
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瑳羅 | 私はあなたの事など何とも思っておりませんわよ。 |
優、ショックを受ける。 |
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優 | そ、そんな…。 |
連 | 優、失恋の巻。なんてな。 |
有栖 | あっさりふられたね、優。どんまい。 |
優 | うう…。今日はもう帰ります。 |
瑳羅 | あら、早いですわね。ごきげんよう。 |
優、更にショックを受けつつ会議室を後にする。 |
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連 | ありゃしばらく寝込みそうだな。まあ来年の体育祭までは仕事ないから大丈夫か。 |
有栖 | 人望薄い会長らしい発言ですね。 |
勢いよくドアが開く。 |
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晴鵺 | いよう。会計がめっちゃ暗い顔して出てきたけど何かやってたのかよ? |
連 | 晴鵺!久しぶりだなぁ! |
有栖 | え、なんでこの人が昼間に出てきてるのさ!白会長が寝てる時じゃないと出てこないんじゃないの!? |
連 | そういやそうだな。…しかもなんか全身びしょぬれじゃん。 |
晴鵺 | あー、さっき中庭で水まいてる用務員のおっさんに水かけられてさ。また気絶してやがんのあの馬鹿。 |
有栖 | それでまたでてきたわけえ?ていうかここ来ないで下さい。 |
晴鵺 | 丁度ここが一番近かったんだよ。暖くらいとらせろ。 |
連 | まあまあ。とりあえず晴鵺、ストーブの方行って暖まれよ。有栖はお茶いれて。 |
有栖 | なんで僕が…。 |
有栖、お茶をいれて晴鵺に持っていく。 |
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有栖 | ど・う・ぞ。 |
晴鵺 | あ・り・が・と・さん。 |
連 | お前らもっと仲良くしてくれよ…。そういやさ、晴鵺って出てきた時何してんだ? |
晴鵺 | 出てきた時?そりゃ当然酒のんだりバイク乗って突っ走ったり煙草すったり…。 |
有栖 | うっわ、不良。 |
晴鵺 | いいじゃねーかよ。お前らみたいに四六時中外にいられねーんだから好き勝手させろよ。 |
瑳羅 | 外がお好きならどこか遊びにいかれてはどうですの?ここにいても私にとって邪魔なだけですわ。 |
晴鵺 | じゃてめーがどっかいけよ。びしょぬれの格好で外出たら風邪ひいちまう。 |
瑳羅 | か弱い女に寒い中出て行けとおっしゃるの? |
晴鵺 | どこがか弱いんだよ。か弱いどころか図々しいじゃねーか。 |
瑳羅 | レディに失礼ですわね。それにここは私達黒の領域ですわよ。真冬の外に行くなんて絶対嫌ですわ。 |
連 | もーいいかげんにしてくれよ喧嘩すんのさあ…。 |
有栖 | でも会長、喧嘩売ってくるのはいつもこの人じゃないですか。 |
連 | その都度お前らが反論してるからいけないんだろうが! |
有栖 | 明らかに差別的意見ですよ会長。それにこの人は白会長の体だけど実質学校とは無関係な人じゃないですか! |
晴鵺 | いちいち細かいことにうるせー奴だな。俺がこの体にいる間は俺も学校の人間に決まってんだろ。 |
有栖、むきになる。 |
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有栖 | 細かくて結構です!学校に在籍する人間として認められるのはあくまでも白会長の方であってあなたは学校にとって赤の他人…。 |
晴鵺が言い返そうとした瞬間、廊下から大きな怒号が響く。 |
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嶂 | それでも記者を目指してるのか!これじゃ記事として誰も見やしない、書き直して来い!! |
生徒C | す、すみません! |
走り去る足音。そのままもう一つの足音が会議室に入ってくる。 |
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連 | な…どうしたんだ?今の。 |
晴鵺 | つか、お前がまともな喋り方してるのはじめて聞いたぞ…。 |
嶂 | あ?わりぃわりぃ。 |
有栖 | お、お茶いれますね…。 |
晴鵺 | おい、俺の時は嫌そうにしてた癖に態度が違いすぎねーか? |
有栖 | 報道部は中立の存在です。あなたと扱いが違いますよ。 |
晴鵺 | …つくづくむかつくなー。 |
連 | あれはしょうがないんだよ。有栖は扱い方極端だけどな。…そういえば、六月のときもあんな怒鳴り声聞こえたな確か。 |
晴鵺 | ん、そんな事あったっけ?文化祭前であったの六月が最後だったけどよ。 |
連 | ああ、晴鵺はいつも夜に会うから知らないか。報道部は半年ごとに学校誌だしてんの。 |
晴鵺 | それじゃ知ってるわけねーか。…てことは今のはそれに関係してることってことか? |
嶂 | せやで。編集で一年がアホかましよってなぁ。ま、いつものことやし気にせんといて。 |
連 | あれがいつもの事なのかよ…。 |
有栖、お茶を持ってくる。 |
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有栖 | どうぞ。 |
嶂 | お、さんきゅー。 |
嶂、お茶を一口飲む。 |
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嶂 | いやー、今年は難題だらけで困ったもんや。報道部入った生徒少ないやろ?それで人手が足らんのや。入った後輩も作業が遅くてなー、文化祭の生徒会勝負のコーナーができとらんねん。 |
晴鵺 | 締め切りがやべーってやつ? |
嶂 | せや。生徒会のコーナーは毎年人気あってなー、いつもギリギリで発行してるんやけど今年は無理かもしれんわ…。 |
連 | マジか…。あ、じゃあさ、すこし俺にやらせてよ。 |
嶂 | ホンマか?助かるわー。 |
晴鵺 | 面白そうじゃん、俺もやってみてーな。 |
嶂 | お。二人いれば何とかなるかもやな。よっしゃ、二人ともこっちや。 |
報道部室にやってきた三人。 |
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連 | うわー、すげえ紙の山。これ全部学校誌の原稿かよ? |
嶂 | せやで。まぁほとんどボツ原稿やけどな。あそこのデスクにある奴が今使ってる原稿や。 |
晴鵺 | 山を見るとほとんどねえに等しいな。 |
連 | そんで、俺らは何を手伝えばいいんだ? |
嶂 | あ、それ触れんといて!まだ目通してない奴なんや。 |
連 | あ、ごめ…。 |
晴鵺 | 厳しーい。本職んなるといつもの暢気さが一気に消えんだな。 |
嶂 | これくらいまだまだ序の口やで。ほんじゃー…せやな、連には俺と生徒会勝負のコーナー手伝うてもらうかな。晴はそっちの原稿をパソコンに書き起こして。 |
連・晴 | 了解! |
三人、アドリブで会話。時折怒声が混じりつつFO。チャイムFIと共に龍亮が黒の会議室にやってくる。 |
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龍亮 | おい、連の奴いるか! |
優 | 会長ならついさっき帰りましたよ。 |
龍亮 | あのやろー…。 |
優 | (会長、また何かやらかしたのかな…。) |
優の呟きと同時にドアが閉まり、走り去る龍亮。 |
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連 | お、白会長じゃーん。 |
龍亮 | お、じゃない!お前なんだよこれ! |
連に学校誌を突きつける龍亮。 |
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連 | へへ、いいじゃん。「黒龍会の魅力、白虎会の欠点!」俺と晴鵺で作らせてもらったぜ。 |
龍亮 | 第一、学校誌は嶂の仕事じゃなかったのかよ!? |
連 | だーって人手が足りないって言ってたから是非手伝おうって思ってさー?そしたら手伝ってくれた礼にコラム作っていいって。 |
龍亮 | こんの…。 |
背後から龍亮の頭をカバンで叩く凛。 |
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凛 | そうかっかしなさんな。あんまりキレて晴鵺が出てきても知らないよ? |
連 | そういうこと。ほらおさえておさえてー。 |
龍亮 | おまえなあー…。 |
生徒C | あの、連先輩。 |
更に凛の背後から小さな声が届く。 |
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連 | ん? |
生徒C | 学校誌みて、黒龍会がすごくかっこいいと思いました!来年は報道部辞めてぜひ黒に入ろうって思いますっ! |
生徒C、そのまま走り去る。間抜けそうな音を残してあっけにとられる三人 |
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連 | …ま、アピールは大事ってもんよ。勝っても油断はできないっつう事だな! |
龍亮 | …いっぺんシメなきゃ気がすまないっ!そこで止まれえっ!! |
連 | おーこわいこわい。 |
龍亮、怒鳴りながら連を追いかける。取り残された凛の後ろから皓、雅、有栖、瑳羅、優がやってくる。 |
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皓 | やっぱり例のコラムで会長怒りましたか…。 |
凛 | あんだけ息が合ってるんだから、学校の外でくらい仲良くしたらいいのにねえ。そうは思わないかい? |
雅 | 喧嘩するほど仲が悪いってやつですね! |
瑳羅 | お馬鹿丸出しですわよ。喧嘩するほど仲が良い、ですわ。 |
優 | 瑳羅さんが珍しく歩いて帰ってる…! |
有栖 | なんだかんだで楽しそうだからいいんじゃないですかねえ。 |
チャイムの音と帰路に着く生徒達の話し声交えて全体FO。 |
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Fin. |